男であるが小便は座ってしている
家は洋式便所である。 今現在、男であるが小便は座ってしている。
十年以上前の話である。 冴えない学生だった僕は、アパートに一人暮らしをしていた。 初夏だったと思う。明るい日だったことだけは覚えている。 昼間からビールを飲みながらテレビを見ていた。
めんどくさがり屋だったため、便所に行くのも面倒だった。 面倒なので便意が限界になるまで便所にいかなかった。 ビールを飲んでいたため便意はどんどん高まる。 便意が限界になった時に便所に駆け込み、立って小便をおもくそぶっ放した。 その当時は、小便を座ってするなんてことはしていなかった。
雫。小さな雫が一滴である。 唇にかかった。 雫の発生源として考えられるのは一箇所しかない。 何度考えても一箇所しかなかった。
信じられないことだが。立った状態で便器に小便をして、唇まで雫が飛んだのである。 少し潔癖症が入っている自分は狂乱せんばかりに唇を洗いまくった。 でも、まだ起こったことを信じられない自分がいた。
それからずいぶん経ってからだ。 たしか、トリビアの泉というテレビ番組だったと思う。 洋式便所に立って小便をしたらどの程度雫が飛ぶのかを実験していた。 結果、それはそれは跳ね返りまくっていた。 それをみて、やっぱりあの唇にかかった雫はそういうことかと思った。
それ以来、小便は座ってしている。 そんな話である。